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福島学カレッジ2025

表現コース修了制作展
中高生が表現する
「私と福島」展
福島って、なんだ。自分って、なんだ。
福島って、なんだ。自分って、なんだ。
福島って、なんだ。
自分って、なんだ。
福島学カレッジ表現コース修了展
中高生が表現する
「私と福島」展
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「私と福島」展とは?

「福島学カレッジ」表現コースで学んだ県内外の中高生15名によるグループ展。震災を経験した福島を自分自身の視点でとらえ、自由な方法で表現した作品を展示します。
福島の15年間の歩みと、同じ時の中で成長してきた中高生。現地視察、ワークショップ、自己観察、課題制作、対話型鑑賞などの取り組みをとおして、言語と非言語/具体と抽象/自己と他者 の往復を実践し、『私』がとらえる『福島』を一つの形に仕上げました。
そのまなざしから、こんどは作品と対峙した一人一人が『私』自身について考えを深める時間が生まれます。 あなたと福島のあいだには、どんな物語があるでしょうか。

制作にあたって、受講生は
「鑑賞者と共有したいこと(100%伝わるようにデザインしたこと)」
「自由に考えてほしいこと(問いを生み出すためにアートしたこと)」
をそれぞれ言語化しました。
作品に込めたメッセージは作品紹介でご覧になれます。

「福島学カレッジ 表現コース」が
グッドデザイン賞を受賞!
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「多様な震災伝承を担う人材育成プログラム
福島学カレッジ 表現コース」は、
2025年度グッドデザイン賞(主催:公益財団法人日本デザイン振興会)を受賞しました。

3.11を経験し複雑な課題に向き合い続ける福島をフィールドとした探究やワークショップを通じて、参加者が自己や他者、土地との丁寧な対話を重ねるプロセスが高く評価され、そこから生まれる中高生のしなやかな言葉の力に強い感銘が寄せられました。
全国の若者にとってかけがえのない学びを生む場のデザインに共感をいただき、たいへん嬉しく思います。
この賞は、参加者の皆さんひとりひとりの挑戦の積み重ね、そして支えてくださった方々のおかげで受賞できたものです。この受賞を励みに、未来を担う世代が自らの言葉と表現で社会を切り拓く力を育めるよう、今後も取り組みを続けてまいります。

グッドデザイン賞審査委員による
評価コメント

東日本大震災から14年以上が経過し、その歩みとともに育ってきた中高生が、福島という土地に向き合いながら、自分自身の過去・現在・未来、そして他者との関わりについて深く対峙し、表現へとつなげるプログラムである。自己との向き合い方や、それを言葉や表現へと昇華するプロセスの丁寧さは特筆に値し、そこから生まれる中高生の言葉のしなやかさに強い感銘を受けた。私たちにとって忘れてはならない経験の地である福島において、子どもたちがこのような学びと表現の力を獲得していることは極めて心強い。同時に、自己と他者、土地と自分との丁寧な対話の積み重ねは、どこに生きる子どもたちにとっても普遍的でかけがえのない学びとなることを示唆している。

「多様な震災伝承を担う人材育成プログラム
福島学カレッジ 表現コース」

  • プロデューサー:東京大学大学院 情報学環准教授 開沼博
  • ディレクター:株式会社固 菊地ゆき
  • デザイナー:株式会社固 菊地ゆき / 株式会社ル・プロジェ 橋本豪・安藤貴広
座談会

講座初回から修了展までの8カ月間をともに歩み、全4回のプログラムを修了した15名の受講生のみなさん。修了展の開催前夜、作品の設営が済んだ15名のアーティストに、これまでの活動を振り返ってもらいました。

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Q.ゲスト講師をお招きした「短歌」と「ラップ」の
ワークショップはいかがでしたか。
橋本心春さん:
短歌の魅力に気づきました。五七五七七というすごく短い文字の中で、その時の情景や自分の気持ちを詰め込みながら、他の人も共感できるような抽象的な表現に落とし込む。具体と抽象のバランスを探るのがすごくおもしろかったです。
遠藤琉月さん:
初めてラップに挑戦しました。テーマが「謝りたいこと」で、私は部屋の壁に穴を開けてしまったことを題材にしました。自分の気持ちをどう歌詞に落とし込むかに悩んだけど、身振り手振りを交えることで、人前が苦手な自分でも少しリラックスして挑戦できました。
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Q.表現することについて、
どんな発見や挑戦がありましたか。
今井奏大さん:
僕は防災専門の高校に通っているので、これまでも東日本大震災について「学ぶ」ことはたくさん経験してきました。今回参加して、「学んだことをどう伝えるか」を考えるようになったと思います。思いを伝えるためにはさらにこんなことも学ばないと、という学びとの循環もありました。「伝えること」を主軸に置くと、学び方の意識自体も変わるんだなと実感しました。
小曽根蒼さん:
伝えたいことを印象に残してもらうために、作品の仕掛けを工夫したり。でも、見終わった後に「あの仕掛けがすごかった」という印象だけ持ち帰ってもらうのは違うなと思って。インパクトを出すことと本当に届けたいメッセージを伝えることのバランスの取り方が難しかったし、成長にもつながりました。芸術高校では成績のためにうまく作ることを重視しがちだけど、カレッジのみんなは「伝えるために」時間をかけて頑張っている。これが表現なんだなって、原点に戻れた感覚がありました。
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Q.自分自身を知ることについて、
どんな気づきがありましたか。
小林ゆずかさん:
こういうサードプレイスの活動に参加するのは初めてで、これまでは自分と向き合う機会がほとんどありませんでした。作品づくりを通じて積極的に「自分と向き合う」ようになって、その過程で、過去や今だけじゃなくて将来のことも改めて考えてみようという気持ちの変化がありました。
石井蒼唯さん:
もともと動画編集や音楽が好きだったけど、友達に話しても「趣味程度でしょ」と軽く見られることもあって、それがずっと引っかかっていて。カレッジの活動を通して、これまでの経験や気持ちを整理する時間が作れました。
大きな変化は2つあって、1つは自分が今どう思っているか、これからどうしたいかを言語化できるようになったこと。もう1つは、好きなことや自分らしさのアウトプットに自信を持てるようになったこと。自分を表す言葉がぱっと出てくるようになったことに、自分自身でも成長を感じています。
遠藤琉月さん:
前までは、周りの人の意見がすごく光って見えて、自分の意見は言う前に自分で却下してしまう癖がありました。でも表現コースで自分の考えを伝えたときに「それいいね」と言ってもらえることがあって、自分の意見も出してみようという意欲が湧いてきました。周りの意見も自分の意見もどちらも輝いて見えるようになった気がします。
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Q.人との関わりの中で気づいたことはありますか。
吉田和奏さん:
美術館で作品を見るとき、作者がどう思っているかは想像するしかないですよね。カレッジでは作者がみんな目の前にいる。聞けば聞くだけ答えてくれるので、自分とは全く違う視点をたくさん知ることができました。美術館で作品を鑑賞するときも、「この人はどういう意図で作ったんだろう」と考えやすくなったと感じています。
吉田來夢さん:
人との関わり方そのものを知ることができました。カレッジでは絶対に否定されないし、自分も否定しようと思わない。お互いの考えや意見をちゃんと言い合えたから、「自分はこういう関わり方をしたらうまくいくんだな」ということがわかりました。自分が何者かを考えることだけが自己理解じゃなくて、人とのコミュニケーションのとり方を考えることもまた、自分を理解することなんだと思いました。
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Q.福島を知る、という体験はどうでしたか。
梶原希望さん:
茨城にいると、震災について詳しく触れる機会があまりありません。でも表現コースを通じて、福島は思っていたより自分に近いなと感じました。被災してから困難の中でここまで頑張ってきた福島の姿と、普段の生活で迷ったり大変なことがある自分自身の姿が重なって見えて。表現という形で福島に近づくことができました。
加藤千紗さん:
福島のことが全部分かったわけではもちろんないけれど、人との関わりを通じて福島の温かみを知ることができました。復興は一朝一夕でいくものじゃない、ちょっとずつちょっとずつ形になっていく。たった一目だけでは何も変わらないけど、その積み重ねで今がある。そういう感覚を「編み物」というモチーフを通して自分の作品に込めました。
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渡辺陸斗さん:
カレッジに参加する前までは、双葉地区の復興についてニュースで見ても何も思わなかった。でも参加してからは、双葉のニュースが気になってアンテナを張るようになりました。福島に対する解像度が高くなったし、これで「福島県民だ」と胸をはって言える気がします。
関根瑠莉花さん:
震災当時は1歳でもちろん記憶がないから、ニュースを見ても「大変だったんだな」くらいにしか思っていませんでした。カレッジで学んでからは、当時の自分を守ってくれた家族の存在に改めて気づきました。ハイハイで動き回る私を、ひいおばあちゃんがずっと抱っこして守ってくれていた。そういう家族の当時の思いや15年間の歩みに目をむけるきっかけになりました。
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Q.カレッジで出会った仲間との
つながりについて教えてください。
金内乙葉さん:
学校だと、真面目な話をするのがちょっと気恥ずかしかったりする。全く違うところに住んでいて、全然知らないメンバーだからこそ、ちゃんと真面目な話ができるところが良かったです。
今井奏大さん:
わざわざ遠くから福島に来て学ぼうとするくらいのやる気がある人たちが集まっている。ここにいるってことは、何かしらいろいろ考えていることがあるんだなっていう前提があるから、いろんな話がしやすいし、一緒に頑張れる。そこが学校とは違うところだと思います。
小島百花さん:
これまで個人的な活動として、大阪から福島を訪れ、大人の方々にインタビューをしてきました。そこでは実際の被害の話を聞くことが多かったけど、カレッジでは同世代だから、もっと踏み込んだ話ができました。方言の違いとか地域の文化の話とか、「被災地」としての話だけじゃないやりとりができるのがおもしろかったです。
面川瑶青さん:
自分からこのプロジェクトに参加したいと思って集まった人たちだからこそ、福島についてより深く考えられたと思います。同じ表現の手法を使っていてもやり方が全然違っていたりして、お互いにいい刺激をもらえる関係が築けました。
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「福島学カレッジ」
表現コースとは?

「福島学カレッジ」表現コースは、県内外の中高生を対象とした探究プログラムです。全3回の実践型ワークショップと2回のグループ展を通じて、東日本大震災と原子力災害を経験した福島を自分自身の視点で捉え、自由な方法で表現する力を育成。地域課題と自分自身を主体的に結びつけ、自己表現としてのアートを身につけることで、新たな伝承・対話の形を実現します。2025年度は県内外の中学生2名、高校生13名が参加者となり活動。現地視察、ワークショップ、自己観察、課題制作、対話型鑑賞などをとおして〈言語と非言語の往復〉〈具体と抽象の往復〉〈自己と他者の往復〉に取り組み、自分自身が捉える『福島』の姿を探りました。修了制作では「私と福島」をテーマに各人が想いを言語化し、自由な表現方法で作品制作に臨みます。

| 福島学カレッジ 統括プロデューサー | 開沼博
(東京大学大学院 情報学環准教授/東日本大震災・原子力災害伝承館 上級研究員)
| 表現コース プログラムディレクター | 菊地ゆき
(株式会社固 コピーライター・クリエイティブディレクター)
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言語と非言語の往復
▶︎リリックとパフォーマンス
2025年7月26日から28日にかけて、第1回のワークショップを開催。ミュージシャン・DJみそしるとMCごはんさんをゲスト講師にお招きし、「ラップの制作」に挑戦しました。テーマは「謝りたいこと」。ふだんは言い出しにくい、言い表しにくい感情に目を向け、その想いが最もしっくり乗る言葉やトラック(曲)を選んで組み合わせ、さらにパフォーマンスに落とし込みました。
テーマ:謝りたいこと
制 作:DJみそしるとMCごはんさんが厳選したトラック(曲)をもとに、参加者がテーマに沿ったリリック (歌詞)をそれぞれ制作し、自分自身の身体を使ったパフォーマンス作品として発表。
Day1|被災地をめぐるバスツアー
アイスブレイクの自己紹介ワークを終え、まずは「東日本大震災・原子力災害伝承館」の見学。その後バスに乗り込み、開沼博先生のガイドに耳を傾けながら双葉郡の被災地を訪れました。捉えたことを具体化・抽象化・言語化するワークを、繰り返し実践。
Day2|「福島学」講義/表現のワークショップ
午前中は開沼先生による「福島学」の講義。イメージと事実のずれに気づき、知ったつもりになっていることの怖さや情報発信の必要性について考える機会を得ました。午後からはDJみそしるとMCごはんさんがゲスト講師に!「謝りたいこと」をテーマに ラップのリリック(歌詞)とパフォーマンスを制作しました。
Day3|作品発表
まる一日足らずの制作時間の中で、リリックとパフォーマンスが完成!思い思いの方法、思い思いの場所でパフォーマンスを披露し、DJみそしるとMCごはんさんに一人ひとりの作品の魅力についてコメントをいただきました。同じものに触れても視点が異なればまったく違う表現になること、そしてそのおもしろさを実感できた、濃密な3日間でした。
〈参加者の声〉
  • ・自分の知らなかった福島を知った。
  • ・自分の新しい面を発見することができた。
  • ・震災の怖さと復興の力強さを学べた。
  • ・やりきって自信がついた!
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具体と抽象の往復
▶︎ 丸シールを画材にして
2025年8月22日から24日にかけて、第2回のワークショップを開催。初日の夜、日中に経験したことを振り返りながら「丸シール」を用いた表現に挑戦しました。配布した丸シールを必ず使うこと、スケッチブック1枚に収めること、の2点をルールとして、それ以外の発想は自由。制限があったりなかったりすることで「伝える・伝わる」にどのような影響が生まれるか、そこへ自覚的になりながら表現や対話を進めることを体感します。
テーマ:私と福島
制 作:事務用品として使われる丸型のカラーシールを用い、「私と福島」というテーマに沿って作品を制作。
鑑 賞:まずは作品そのものを鑑賞。得た印象、気づいたこと、問いを感じたことなどをメモする。次に作者のプレゼンテーションを聴き、納得したこと、新たな気づき、問いを楽しむ。作者は「伝えたかったこと」「思い通りに伝わったこと」「思いがけず伝わったこと」「伝えきれなかったこと」を振り返る。
Day1|福島と自分をつなぐワークショップ
1日目は、石井伸弥先生による「問いの作りかた」のワークショップを体験。枠の認知、視点操作、要素結合の3つのキーワードをとおして、「私」と「福島」の関係について探っていきました。日中に経験したことを振り返りながら 就寝時間までに個人で進める「よるワーク」では、事務用品として使われる大小さまざまな丸シールを使って『私と福島』を表現する平面作品づくりに挑戦しました。
Day2|よるワークの作品鑑賞
午前中は、丸シールを用いて制作した『私と福島』の鑑賞。まずは作品そのものを鑑賞し、得た印象、気づいたこと、問いを感じたことなどをメモします。次に作者のプレゼンテーションを聴き、納得したこと、新たな気づき、問いを楽しみます。作者は「伝えたかったこと」「思い通りに伝わったこと」「思いがけず伝わったこと」「伝えきれなかったこと」を振り返ります。お互いの作品とそこに込められた想いを言語化し伝えあう、対話形式の鑑賞を行いました。
〈参加者の声〉
  • ・コミュニケーションについて改めて学び直すことができた。
  • ・自分の考えを言語化することがとても難しかった。
  • ・「いい雑談」ができるような人になりたい!
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自己と他者の往復
▶︎ 短歌と鑑賞
2025年8月22日から24日にかけて、第2回のワークショップを開催。歌人・木下龍也さんをゲスト講師にお招きし、「短歌の制作」に挑戦しました。テーマは「現地ツアーで、小さく心が揺れたこと」。小さな心の動きを思い返せるよう、短歌に託します。木下さんがひとりひとりのエピソードに寄り添い、納得のいく一首を練り上げていきました。
テーマ:現地ツアーで、小さく心が揺れたこと
制 作:テーマに沿ったエピソードを、まずは短い文章で表現。それを57577の31音にブラッシュアップしていく。
鑑 賞:まずは作品そのものを鑑賞。得た印象、気づいたこと、問いを感じたことなどをメモする。次に作者のエピソード文を読み、納得したこと、新たな気づき、問いを楽しむ。作者は「伝えたかったこと」「思い通りに伝わったこと」「思いがけず伝わったこと」「伝えきれなかったこと」を振り返る。
Day1|表現のワークショップ
午後からは木下龍也さんがゲスト講師に!「現地ツアーで、小さく心が揺れたこと」をテーマにした短歌づくりに挑戦しました。木下さんとの対話を踏まえながら、自分の内面を少しずつ言葉にしていきました。
Day2|作品発表
まる一日足らずの制作時間の中で、短歌を完成させた15名。それぞれの短歌を鑑賞しあう歌会を開催しました。メンバーや木下さんからメッセージをもらい、自分自身の受け取りかたも届けます。
枠にとらわれずに様々な表現のしかたや伝えかたがある、そしてだからこそ「何を伝えるか」をデザインすることが必要だ、ということを実感できた、濃密な3日間でした。
〈参加者の声〉
  • ・短歌と向き合う時間がとても長かったのに、すごく短く感じた。
  • ・みんなのそれぞれの視点が興味深くて、いろんな発想ができた。
  • ・言語化と鑑賞の難しさ、楽しさを実感した濃密な3日間だった!
ゲスト講師のお二人より
DJみそしるとMCごはん
DJみそしるとMCごはん
(ミュージシャン)
PROFILE

「おいしいものは人類の奇跡だ!」をモットーに、トラック、リリック、アートワーク、映像などを自ら制作し、料理と音楽の新たな楽しみ方を提案する、超自家製ラッパー。 まぎらわしい名前だけど、一人。近年では、絵本の出版や子供向けワークショップの講師、食育の講演会を行うなど、好奇心の赴くままに活動の場を広げる。各地の食材をフィーチャリングに迎えた出張食堂『ジャスタジスイ食堂』もじんわり始動!
https://www.omisohan.com/

DJみそしるとMCごはん
(ミュージシャン)

これまで福島を『遠い』と感じていて、現状を知らないでいたことへの後ろめたさもありました。今回のワークショップで復興へ向かう町に足を運んでみると、私たちと変わらない日常もそこにあることを実感しました。
ワークショップでは参加者にラップとMV制作を指導。4時間という短い時間で、中高生の皆さんは「こだわりがあるもの」をテーマに、ラップの制約の中で思いを表現してくれました。中高生の皆さんは志が高く、初めてのラップ制作に飛び込んでくれて、さらに映像制作でも自分のアイデアを盛り込んでくれて嬉しかったです。
表現とは、自分と向き合う行為です。自分を嫌いになったり、『自分って天才かも』と思えたり、でも次の瞬間に絶望したりと、そういう過程を経て表現が生まれます。
皆さんの作品を鑑賞して、自分のことを突き詰めて表現するという経験が、中高生の時期に価値観に大きな影響を与えると感じました。

木下龍也
木下龍也(歌人)
PROFILE

1988年山口県生まれ。歌集は『つむじ風、ここにあります』『きみを嫌いな奴はクズだよ』(ともに書肆侃侃房)『あなたのための短歌集』『オールアラウンドユー』(ともにナナロク社)。その他、短歌の入門書や共著歌集など著書多数。

木下龍也(歌人)

震災の前も後も福島を訪れたことがなかったので、実際に自分の目で見る経験ができたのは良かったです。福島に対して自分はまだ向き合えていないと感じていましたが、「私と福島」展の作品を通して少しずつ引き込まれていく感覚がありました。
短歌のワークショップでは、参加者が自分の心の中にあるものを言語化し、定型に収める葛藤を見せていただく時間でした。私は教えるというより、皆さんが言葉と向き合う姿を見守る立場を貫きました。参加者たちが諦めずに長い時間考え続ける姿が印象に残っています。
『私と福島』というテーマで皆さんが作られた作品は、今の時点での各自の答えのように感じます。この答えは変わっていってもいいし、変わらないままでもいいと思いますが、考え続けることが大事だと思います。私自身も「まだこれは未完成だ」と思いながら、できるところまでやっていこうという気持ちになりました。講師として来たつもりでしたが、むしろ多くのことを学ばせていただきました。

プログラムディレクターより
菊地 ゆき
表現コース プログラムディレクター
菊地 ゆき
株式会社固
コピーライター/コミュニケーションプランナー
PROFILE

1989年福島県生まれ、東京芸術大学美術学部卒。コンセプチュアルアートの文脈で文芸作品の演出を学ぶ。映像脚本、ストーリーテリング、朗読、作詞など、書かれた言菜や声に出す言葉に注目した作品を制作。福島を舞台にした作品に「ばらあらばらあ」(2010)、「あどけない話、たくさんの智恵子たちへ」(2012)、「コールヒストリー」(2019)。

表現コース プログラムディレクター
菊地 ゆき
株式会社固
コピーライター/コミュニケーションプランナー

学校でも家でもない、誰も自分を知らない場所で、「自分」について語り合う。それを繰り返して「伝わった/伝わらなかった/そう伝わってもいいと思えた」という気づきが重なり、「何が自分の問いなのか」の解像度が高まってくる。私たちがこれから生きる時代には、そんな自己表現力と対話力が必要です。
現代アートにおいて「表現」とは、次のような言葉で語られることが多くあります。/自分自身の視点を映し出すもの。/「あなたは?」と問いを投げかけるもの。/作り手と受け手の、対話の接点。
全国から集まった中高生は、福島と自分自身をどのように結びつけているのだろうか。鑑賞する私自身は、福島をどのように捉えるだろうか。そこにある共通点や相違点は、どのような価値を生みうるだろうか。
そんなことを考えながら、作品の数々をお楽しみいただきたいです。
問いがたくさん、そして答えも一つとは限らないこの福島という地でこそ、「表現」に力が宿ると確信しています。

福島学カレッジ統括プロデューサーより
開沼 博
福島学カレッジ統括プロデューサー
開沼 博
東京大学大学院情報学環准教授
東日本大震災・原子力災害伝承館上級研究員
PROFILE

1984年福島県生まれ。東京大学文学部卒。同大学院学際情報学府博士課程単位取得退学。立命館大学准教授等を経て2021年4月より現職。他に、東日本大震災・原子力災害伝承館上級研究員、ふくしま FM番組密議会委員、東日本国際大学客員教授。著書に「日本の盲点」(PHP研究所)「はじめての福島学」(イースト・ブレス)。

福島学カレッジ統括プロデューサー
開沼 博
東京大学大学院情報学環准教授
東日本大震災・原子力災害伝承館上級研究員

長らく自然は人にとって脅威そのものでした。それは災害や病、飢饉や猛獣となって私たちの日常を破壊するものでした。そんな自然に対峙する中で人間は、様々なこと・ものを創造してきました。
英語学習の中では"Art"に「芸術」という意味もあれば「人工物」という意味もあることを教えられますが、人間が創造するあらゆること・ものがArtなわけです。自然に対してArtをつくり続けてきた中で、いま人間はどうなっているのか。社会学における「リスク社会論」と呼ばれる理論は、その問いに一つの視点を提示します。
自然に対してこと・ものをつくる中で、今度は人間がつくったこと・もの自体が人間の脅威になってきたんだ。例えばそれは20年近く前にあったリーマンショック。例えばそれは15年近く前にあった原発事故。例えばそれは5年近く前にグローバル化の中で一気に拡がった感染症。これらは人間が人間の暮らしを安心して便利にしようと発明したもの自体が、逆に人間にとっての大きな脅威となった事例です。リスク社会論ではそのように、人間のために発達してきたArtが、人間に襲いかかってくる、しかも自然の脅威とは違って、時間・空間・社会的影響の範囲を縦横無尽に飛び越えてそうしてくる、と捉えます。
あらためてArtを「芸術・表現」という意味に引き戻してみます。いま私たちに何ができるのでしょうか。芸術・表現は時間・空間・社会的影響の範囲を縦横無尽に飛び越える力があります。逆に、政治や市場を動かす力はそれほどでもないのかも知れない。実際に表現を仕事にすることに徹する人はどんな時代でも社会の周縁にいた人が多い。だけれども、そうであるからこそ、Artにしかできないことはあるはずです。それが何なのか。
中高生が表現する「私と福島」展を通して考えるきっかけになれば嬉しいです。

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